EK003-海水魚水槽に強力な濾過装置を入れると水換え頻度が増す

今回は、おそらく人類が『魚を飼う』という行為を始めてからこのかた、永遠のテーマともなってきた、『濾過』の話をしたいと思います。



魚を飼うということ = 濾過の重要性

海水魚に限った話ではありませんが、魚はエサを与えないと餓死してしまいます。

しかしエサを全部食べてくれたらいいのですが、食べ残したり、そうでなくても魚はフンをしますが、そういったエサやフンなどの有機物は、放置しておくとアッという間に飼育水を汚してしまい、魚の住めない環境になってしまいます。

なので、積極的に有機物を取り除く『濾過』が必要となってきます。

しっかり濾過をしてね!

この『濾過』という作用は自然界でもごく普通に行われていて、有機物は分解されると、最初はアンモニアという猛毒の物質になってしまいますが、微生物(細菌)によって段階を経て無害な窒素へと変わっていきます。

腐敗 ~ 無毒物質(窒素)への変換

有機物 → アンモニア → 亜硝酸 → 硝酸塩 → 窒素

アンモニア

化学式:NH3

無色透明で、刺激臭の強い猛毒の気体ですが、『亜硝酸菌』という細菌(バクテリア)によって酸化され、亜硝酸になります。
(亜硝酸菌:ニトロソモナス属、ニトロソコッカス属、ニトロソスピラ属など)

2NH3 + 3O2 → 2HNO2 + 2H2O + 158 kcal

亜硝酸

化学式:HNO2

アンモニアよりは多少マシとも言えますが、血液中のヘモグロビンを、酸素を運べないメトヘモグロビンに変えてしまい、結果的に酸欠になってしまうので、まだ猛毒の域を出ていません。
この亜硝酸は『硝酸菌』によって酸化され、より毒性の低い硝酸塩となります。
(硝酸菌:ニトロバクター属、ニトロコッカス属、ニトロスピラ属など)

2HNO2 + O2 = 2HNO3 + 18 kcal

この、『硝酸塩にするところ』までが、通常の『物理濾過装置』でカバー出来る限界です。

硝酸塩

化学式:HNO3

ちまたでは「サンゴや一部の魚にとっては毒性が高いものの、だいたいの魚にとっては毒性が低い」と言われてますが、これも濃度が高い(30ppm を超える)と魚が成長できなくなったり、免疫系が弱って病気になりやすくなるなど、注意しないといけないものに変わりありません。

また、高濃度化すると藻類の異常発生の原因にもなるので、アクアリストには見逃せないものですよね!

自然界では『脱窒菌』によって還元され、硝酸塩は無害な窒素に変わります。
(脱窒菌:シュードモナス・デニトリフィカンス、パラコックス・デニトリフィカンスなど)

この処理をしてくれる『脱窒菌』は、普段酸素のある環境では普通に酸素呼吸をしてますが、『極低酸素』の環境では酸素呼吸が出来ないため仕方なく『硝酸塩呼吸』という、硝酸塩に電子を与えて呼吸するという能力があり、水槽ではその能力を利用した専用の脱窒還元装置が必要になってきます。

1)NO3 + e → NO2
2)NO2 + e → NO
3)NO + e → N2O
4)N2O + e → N2

このように、電子を与えて還元作用を繰り返し、硝酸塩から窒素に変えていきます。

しかし、この装置の難しい所は、装置内を完全な無酸素状態にしてはダメで、あくまで『極低酸素』という特殊な環境にコントロールする必要があるところです。

物理濾過装置と脱窒還元装置

正直な話、水槽内にたくさん魚を入れれば、そのフンやエサの食べ残しも大量に出るわけで、それを『濾過』しないといけないわけですが、そのために、

「高性能な物理濾過装置が必要だ!」と仰るのはごもっともな話です。

しかし、濾過装置が高性能になればなるほど、副産物の硝酸塩も大量に発生するので、それをどうやって取り除くのか?という命題を解決しないといけません。

脱窒還元装置

硝酸塩の濃度を下げるのに特化した『脱窒還元装置』とは、どんなものでしょうか?

まず、脱窒菌は生命活動を維持するため何らかの有機物から栄養を取り込まなくてはならず、その栄養源として使われるのが生分解性プラスチックで、それを装置内に入れます。

そして、装置内を流れる水の量もかなり絞ってあげることによって、酸素のたくさん溶けた水が装置内に少しづつしか入らないようにし、装置内の酸素を極限まで減らします。

装置の入口付近では酸素が豊富にあるため、脱窒菌は酸素呼吸をしますが、内側に入るにしたがって酸素が消費されて少なくなっていき、脱窒に相応しい環境となっていきます。

装置の奥の方では酸素呼吸してないんだね!

その環境の中で、生分解プラスチックを『エサ』として脱窒菌は硝酸塩を窒素に変えていきます。

装置の使い方

装置は自作しても良いですが、いくつかのショップで売ってますので、それを使うのが一番確実です。

他にも、外部フィルターを還元ボックスとして利用するのも良いですが、この装置に通す水の量を調整出来るようにするのがキモです。

1)装置に生分解プラスチックを入れ、飼育水を入れたバケツに放り込みます。
2)水中ポンプでバケツの水を装置内で循環させ、亜硝酸・硝酸塩の濃度を測定します。
3)装置内を流れる水の流速は、装置の説明書がなければ毎分2~5リットル程度を目安にしてください。
4)亜硝酸の濃度が上がってくれば、正常に還元反応が始まっている証拠です。
5)正常に還元反応が進んでいくと、いったん亜硝酸の濃度が上がった後に、亜硝酸は消えます。
6)その後、硝酸塩も消えていきますが、なかなか時間がかかる場合もありますが、我慢です。(笑)
7)硝酸塩も無くなったら水槽(サンプ)に投入して飼育水の硝酸塩・亜硝酸の濃度を経過観察します。

この『脱窒還元装置』を正しく扱うためには、亜硝酸・硝酸塩の濃度を頻繁に測り、水の流量を調整しないといけませんが、正直な話、「初心者さんには難しいのでは?」と思います。

水換えは確実に硝酸塩を薄められる

脱窒還元装置の扱いは難しそうですが、水を換えれば間違いなく硝酸塩の濃度を下げられます。

ただ、水換えは水質が急変するので、魚やサンゴにとっては大きなストレスとなるので、諸刃の剣と言っても過言ではなく、頻度は出来るだけ抑えたいですが、そうなると脱窒還元装置の運用が不可欠です。

水換えで対応するには?

魚やサンゴにとってストレスになるのが、水質の急変であることは上でも述べましたが、つまり急変でなければ良いのです。

つまり、1回の水換えの量を減らし、頻度を増やせば良いです。

また、今までの水換えの頻度では硝酸塩の濃度を低く抑えられなかったのですから、水換え量を減らすのにさじ加減が必要なのは言うまでもありません。

ボクらもあんまり急に水質が変わるとアセるよ~!

魚を減らしてみよう

観賞という意味では『後ろ向き』な提案となってしまいますが、魚を入れ過ぎている方が多いと思いますので、まずはあなたの『水槽のキャパ』を見直す所から始めてみても良いと思います。

既にたくさん飼われているのであれば、「これ以上増やさない」という決断も大事だと思いますし、出来ればもう1台、水槽を増やすなどして水槽1台あたりの魚の数を減らす工夫が必要かもしれません。

また、その代わりにソフトコーラルやカクオオトゲキクメイシ、シコロサンゴ、タバネサンゴなど、硝酸塩に比較的強いサンゴを入れて景観を保つというのはいかがでしょうか?

とにかく魚の数を抑え気味にするのがポイント!

プロテインスキマー

プロテインスキマー

一般的に、魚がメインの水槽ではなく、サンゴがメインの水槽で主役と言われているプロテインスキマーですが、魚水槽でも主役にするという発想の転換があっても良いと思います。

以前は輸入ものの大型で高級なプロテインスキマーしか無かったので、

「プロテインスキマーまではちょっと手が出ない」と仰る方も多かったです。

しかし、最近は日本のアクア用品メーカーさんもコスパの高いプロテインスキマーをリリースして来てますので、先に述べたような『発想の転換』があっても良いと思える時期が来たようです。

プロテインスキマーにはアドバンテージがいっぱい!

硝酸塩を発生しない

他のフィルター式濾過装置はどんどん硝酸塩を発生してしまいますが、プロテインスキマーは有機物を泡の力で浮かせて飼育水から分離するので、有機物がアンモニアになる前に取り除く事が出来ます。

つまり、アンモニアも、またその次の生成物である亜硝酸、硝酸塩は飼育水の中では発生しません。

もちろん、硝酸菌や亜硝酸菌は飼育水の中にも居るので、よく言われる話ですが、ライブロックなどでも生物濾過は盛んに行われており、厳密に言うと、硝酸塩は水槽内で発生してます。

硝酸塩は、ホントはボクらにも毒なんだ!

しかし、フィルター式濾過装置で溜まった有機物に絶えず飼育水を通して硝酸塩を大量生産するよりも、有機物自体を取り除いてしまうプロテインスキマーを使った方がよっぽど理に適ってます。

メンテナンスが簡単

泡の力で浮かされた有機物は、プロテインスキマーの上側にある『汚水カップ』に溜まります。

この汚水カップに溜まった汚れを捨てて掃除してあげればメンテナンス終了です。

モノグサな飼育主には朗報かも!

一方、フィルター式濾過装置の場合、通常は水槽のシステムから濾過装置を取り外してフィルターや濾材を洗ったりしないといけません。

外掛け式フィルターはカートリッジ交換だけで済むのでお手軽ですが、そもそも外掛け式フィルターのろ過能力はそれほど高くないので、濾過装置として充分だとは言えないと思います。

まとめ

魚を入れた水槽では、

1)フィルター式濾過装置と脱窒還元装置を使う
※ 理想的に運用出来た場合、水換えは要らなくなるけど、水量管理が難しい!

2)フィルター式濾過装置を使い、換水頻度を増やす
※ 換水頻度を増やすと生体への影響が大きくなるため、1回の換水量を減らすのがキモ。

3)魚の数を減らしてプロテインスキマーを使う
※ 硝酸塩が全く発生しないわけではないので、必要に応じて換水する。

という選択肢があります。

他にもバイオペレットという粒状の生分解プラスチックを使った『バイオペレットリアクター』という装置を使ったり、毎日添加剤を入れたりなどの方法もありますが、追加投資も大きくなったり、よほど気を付けないと水槽崩壊という悲惨な事故も起こる可能性もあるので、他の記事でご紹介させていただきたいと思います。

以上、比較的簡単に出来る硝酸塩対策の方法をご紹介させていただきました。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。